ガスだけなら電車の乗り降りの時、最悪人ごみにまみれて放出すればいいが、
実弾が出てしまったらしゃれにならない。会社の多くのひとが利用する駅で事件を起こすわけには行かない。
考えているうちに電車が到着した。「ええい、ままよ!」と電車に乗りK駅を目指す。
そうしてるうちにもおなかでは激しい戦いが繰り広げられる。
軽く脂汗をかきながら、電車の中吊り広告で気を紛らす。その間も、軽くノックは続く。
なんとかK駅にたどりつき、自転車で一気に坂を下る。もうすぐ家だ。
と、気を緩めたらさらに激しくノックをし始めた。
「家に着くまでが遠足です」という小学1年生の時の大喜多先生の言葉が思い浮かぶ。
駐輪所に自転車を止め、階段を駆け上がり、ドアを開け、靴、かばん、財布、ケータイなど邪魔になるものはトイレに入るまでにすべて外す。
間に合った! しかし、ガスだけ…。
こんなことなら人込みに紛れて…と思ったが、我慢して正解だったと自分に言い聞かせる。